離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 かわいらしい顔つきをしており、流行りの服装やメイクが上手い。
 ただ、甘やかされて育ったせいか若干わがままだと思うのは純玲がこの従姉妹に子供の頃から冷たくされ続けているせいだろうか。
 正直な所顔を合わせたくない。
 そっとその場を離れようとしたのだが、さらに聞こえてきた声に純玲の心臓が凍った。

「まあね。でも瑠美が最優先。こうしている時間はあるよ」
 それはさきほど想いを馳せていた人の声にそっくりだった。

(肇さん……? まさか)
 勘違いであることを確認したくて、震えるような気持で中を伺うと瑠美と抱き合ってキスを交わしている男性がいた。

「忙しいって言って、私と会ってるなんて知ったら純玲ちゃん驚くわね」
 重ねていた顔を離し、くすくすと笑う瑠美。

「ついプロポーズみたいなことしちゃったから面倒なんだよ。あー、失敗した。アイツがオノデラ貿易の長男の娘だって聞いて近づいたのに、父親が社長じゃなくてただの喫茶店のマスターだったなんて。おまけに純玲は養子なんだろ?」
 
 それは間違いなく純玲の恋人、佐久間肇の口から出た言葉だった。衝撃に純玲はそのまま動けなくなる。

「そういう事は先に行って欲しいよな。危うくアイツの両親に会いに行くところだった」
 肇の口調は純玲が知るような優しいものではなかった。人を蔑むような軽薄な声。
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