クノダの物語蜘蛛の糸
わたしの名はクノダ




都市高速13号線をまっすぐに北に向かって走らせている。






持ち物はマイハンドガン、財布のみで
仕事のときはいつも肌身離さず持ち歩いている。






深夜の高速はテールランプと
僅かに光る月夜の灯火、トラックから聞こえる
雄叫びのような ノイズだけが虚しく響かせ

わたしのこころを痛めつける





仕事とはいえ わたしはいったい何人もの魂の
記憶を奪ってしまったのだろう。




人の記憶を奪う仕事、

実にわたししかできない仕事だが、





とほうもない数の人生を躊躇いもなく
破壊してしまった。


罪という夥しい魔物が背中に憑いている。



そんなわたしにも
      思いを寄せている彼がいる。






彼の名はルシフェル。

    リーダーである彼のもと記憶を奪う。

自ら暗殺稼業を買ってでていたわけである。

とはいえ仕事を終えたとき

「ご苦労だったなクノダ。
    今日、お前がいてくれて
           助かったよ。
       オレの奢りだ、一杯やろうぜ」





と言ってくれる労いを聞きたいがために
ハードな仕事をこなしている。

わたしは仕事のあとシャワーを浴び、
穢れをじっくり堕とし

マイハンドガンを磨き、グラスワインを口につけ



静かに
今日の報酬を数える。






しかしだ。





ここからなのだ。

本当の戦いは。


わたしが意識を失ったあと、
夥しい数の顔と手が
夢に出てくるのだ。




出てこない日はない。


浮かばれない魂は毎日、
怨みをつらみに呪いにやってくるのだ。




、、わたしは苦しい。


どうすれば罪が消えるのでしょうか?


わたしは想う、、、





ルシフェル、わたしの働きぶりを知っているん
でしょう?あなたにとってわたしは利用価値がなければ
あっさりと切って捨てられるだけの生命なの?
答えて、??

わたしはそうあってはならないように
仕事を続けなければいけない。




罪を重ね
たとえ浮かばれない魂を増やしたとしても。。


いえ、、


もうひとつあるわ.....!


マイハンドガンで自らの記憶を消すこと。


そうすればわたしクノダの記憶、

大切なルシフェルの記憶も思い出も

全て ぜんぶ消えて 何もなくなる。









わたしは夢を見た。
ルシフェルとの夢。





           *








彼はどこまでも私を想ってくれている。


わたしは自分へ引き金を引けない。
引くことができない。










ルシフェルの蜘蛛の糸はぎりぎりのところで

わたしを生かしている。
            生かされている。

絶妙なバランスでかろうして繋がっている、
蜘蛛の糸が切れないように、





わたしは今日もそそくさと仕事に向かうの。







記憶が消えても
あなたたちがまた再び大切なお方に
      出会うことが叶いますように........







ルシフェルはいいました。



「クノダ......

おまえの暗殺稼業はな、

苦しんでいる人々の記憶の種を 壊すことで

新しく生まれ変わらせている

記憶を消すことで人を救っていって

            いるのだ」



わたしは少し安心した。

    ああやって夢に出てきている無数の
魂はわたしに御礼をいいにやってきているからだ。 


わたしは彼のひとことに救われた。



蜘蛛の糸に掴まり手繰り寄せ
     天界にたどり着いた安堵した
            瞬間だった。








今日もわたしはマイハンドガンを握りしめ、
   冷たい夜の 都市高速を走っていく........

蜘蛛の巣のような人生に
     ゆらゆらと揺られながら
                
           記憶 を 救う


F.I.N

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