素直になれないお姫様の初めてのベッド事情
「……千歳だって……」

思わず、そう言葉が出てしまった。千歳の心が欲しくて。千歳にずっと側にいて欲しくて。

「え?僕?何?美弥の事?」

千歳が、目を丸くしている。

「やっぱり、何でもないっ」

「何でもない訳ないでしょ。泣く位、何が嫌だった?」

千歳は、少しだけ屈むと、目線を合わせるように私を覗き込んだ。

私は、答えられない。

素直になれないくせに、千歳を誰にも取られたくなくて、なんなら千歳に告白しようとしてる、あの子には、千歳と目線すら合わして欲しくない。


「……もしかしてさ……僕が告白されてるの見たの?」

私は、思わず、千歳を見上げた。

「あ、やっぱそっか。実花子が、どこまで見てたのか知ってたのかは、分からないけど、ちゃんと断ったし、恋人がいるって言ったから」

「……恋人って……?ひっく」

「あのね、実花子以外に誰か居んの?てゆうか、僕、実花子としか一緒に居たくないし」

千歳が、唇を引き上げた。

堰き止めてた涙は、口に出せない言葉の代わりにボロボロ溢れていく。

「あー……泣き虫だな。目腫れるよ」 

千歳が、私から身体を離すとティッシュを取りに行く。

千歳の後ろ姿は好きじゃない。

いつも私を見ていてほしいから。

抱きしめていてほしいから。
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