素直になれないお姫様の初めてのベッド事情
「ばっ……」

ばか、違うわよと言いかけて、私は、一呼吸する。こんな子供じみた恋愛の攻防戦を繰り広げるよりも、言わなきゃいけない、うんと大事なコトがある。

いつか素直にならなきゃと思ってるうちに、小さかすれ違いが重なって、この腕が、離れていってしまう事だけは嫌だから。

「……悔しいけど……千歳が好き……だから、もっと……連絡して。あとね……今日ね……」

「帰す訳ないじゃん」

「え?」

千歳が、子供みたいに拗ねた顔をしながら、頭を掻いた。

「そもそも、僕毎晩、実花子から連絡ないか待ってたんだよね。女々しい奴だって思われたくなくて黙ってたけど。でも……そろそろ限界で、実花子に会いたくて堪らなくてさ……」

「そ、う……だったの?」

厳禁な私の涙は、千歳の言葉に反応して、あっという間に止まる。

「あとさー……男が、女の子を部屋に呼ぶってさ、当然下心がある訳。だけど、実花子が、泊まりの荷物も持たずに、僕ん()来た上に、泣き出して帰るっていうからさー……僕だって困っちゃうってゆうかさ、ショックだったったっていうか……」

「違うっ、私こそ、千歳が、送っていくっていうのが悲しかったのっ……」
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