素直になれないお姫様の初めてのベッド事情
それ以降、年末に向けて、お互い仕事が忙しく、会う事は勿論、ラインのメッセージをやり取りすることもなかった。

私は、寝る前に千歳からのラインがないか確認してから、眠るのが日課になっていたが、本人にそんな事いえる筈もなければ、素直に、ライン位してよとも言えず、こうして仕事納めの日を迎えてしまっていた。

(何だか……緊張するな……)

千歳と二人きりで会うのは、今日で2回目だ。

二人きりになるのすら慣れていないのに、こうして千歳の家にお邪魔させてもらって、千歳の部屋の匂いが、鼻を掠めるだけで、心臓は、過剰に反応して、ドキドキが止まらない。

「あ、コート、そこのハンガー使ってね、僕、今手が離せないから」

「……うん」

木製ハンガーに自身の白いコートを掛けると、千歳のスーツのジャケットの横に並べて掛けた。

クリスマスに私が、千歳にプレゼントした、グレーのチェックのマフラーもキチンとハンガーにかけて並んでいる。

「あ、それめちゃくちゃ、あったかいよ」

千歳が顔だけ、こちらを見ながら、にこりと笑った。

「そう、なら良かったけど」

まただ。

(毎日、つけてくれて有難う)

本当は、そう言いたかった。

私って、どうして可愛い返事ができないんだろう。千歳が毎日、私のプレゼントしたマフラーを巻いてくれていることを密かに確認して知っていたのに。

更には、更衣室で、女の子達の会話ん盗み聞きしてしまったが、他の課の新人の女の子が、千歳に告白しようとしてる事も知っている。まだ入社一年目の、若くてとても可愛い子だった。
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