素直になれないお姫様の初めてのベッド事情
「仕事納めに、乾杯」

「乾杯」

千歳が、ワイシャツを腕まくりしたまま、喉を鳴らしてビールを飲む姿に、少しだけ見惚れてから、私もごくごくとチューハイを流し込んでいく。

「こら。実花子、ペース考えなよ。誰が送ってくと思ってんの」

ーーーーその言葉に心臓がチクンとした。

やっぱりそっか。千歳は、ご飯を食べ終わったら、私を自宅に送るつもりなんだ。

「いいじゃない、いつも送ってるんだから慣れてるでしょ」

私は、目頭が熱くなりそうなのを誤魔化すように、缶チューハイを飲み干した。

「たく。困ったお姫様だな」

呆れたような顔をしながら、左利きの千歳が右手のフォークでハンバーグを口に放り込む。

「あ、うまっ」

千歳が、早く食べろと言わんばかりに、二重瞼を細めながら美味しそうな顔をこちらに向けてくる。

私は、ハンバーグを小さく切って口に含んだ。

「あ……美味しい」

何か隠し味を入れているのだろうか。

まだ煮込んでから、せいぜい1時間ほどしか経ってない筈なのに、ソースの甘みの中にコクまである。
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