素直になれないお姫様の初めてのベッド事情
それに、千歳が、ここまで料理上手な事に驚いた。仕事も多忙で帰宅も遅い癖に、これだけ料理に慣れてるなんて、私が千歳に勝てる要素なんてモノあるのだろうか。

そもそも恋愛に、勝ち負けなんて要らないのなんて分かってる。

それでも、千歳より、出来ることが思いつかない私は、何だか千歳に相応しくない気がして、気がつけば、心の中にゆらゆらと(もや)が溜まっていく。

「どしたの?実花子、今日元気なくない?仕事で何か心配事?」

「別に」 

「ふぅん。じゃあ、ご飯口に合わない?」

「そんな事いってないでしょ」

はぁ。どうしていつもこんな言い方しちゃうんだろう。千歳から連絡をくれて、家に呼んでくれて、私の為だといって、美味しい食事まで作ってくれてるのに、私はどれも素直に喜べない。

千歳に伝えられない。

もしかしたら……千歳なんてどうせ私の事なんて可哀想な同期くらいにしか思ってないのかもしれない……せっかく楽しみにして来たのに、一人で浮かれてた自分が馬鹿みたいだ。

そして、この食事が終われば千歳に帰されると思うと、やっぱり、涙が出そうなほどに悲しくなってくる。

私は、さっきよりもハンバーグを大きく切ると大きな口で飲み込んでいく。
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