素直になれないお姫様の初めてのベッド事情
「……ねぇ、そんなに僕が、クリスマス言った言葉って嘘っぽかった?」

千歳が、私の身体を顔が見えるように、くるりと向きをかえる。

「僕さ、実花子が、好きだって言ったよね?僕だって、暇じゃないから、ただの同期が寝込んでたって、わざわざ看病しに行かないよ。それに今日だって、仕事に一生懸命すぎて、普段ろくな物食べてない実花子に、ご飯作って美味しいって言って欲しくて、仕事早めに納めて帰ってきたんだけど」

見上げれば、千歳が困ったような顔をしながら、私の頭をポンと撫でた。

「実花子は、僕と会うの楽しみじゃなかった?……それとも……やっぱり颯先輩が忘れられない?」

「違うっ、颯のことは、もう何とも思ってないもんっ」

千歳の言葉に、思わず泣きながら返事をしていた。颯の事は確かにすごく好きだったし、引き摺ってた。あんなに誰かを好きになるなんて、もうないのかと思ってた。

「本当?実花子、颯先輩の事が、忘れられないまま僕と居るのかなって」 

「何で……そうな、るのよっ」

私が、今、一緒に居たいのは、居て欲しいのは、颯じゃない。

私が、欲しい心は、颯じゃない。

私が、欲しいのは……。
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