そんなあなたに惚れました
1.突然の出会い
「あぁ゛ーー終わらない…」
宮原京花28歳、現在商社で開発マネジャーやってます。
絶賛未婚独身フリー、もう最後に恋愛したのは2年前。これでも大学時代から6年付き合った彼氏だったけど色々あってお別れした。もう振っ切れたけどその時から男はもういらない、そう思って仕事に打ち込んできたはずなのに…
「なんでこんなに仕事多いわけ!?」
スマホの時計が23時になりそうなのに私は自分の前に山積みになった書類の山を見上げてうなだれる。仕事に突っ走ってきたおかげで開発マネジャーまで昇進できてまあまあ結果も残してる。でもだからこその仕事量に涙が出そう。
「大変そうだな笑。なんでこんなに山になんだよ笑」
「あっ、ちょっと触んないでよ!崩れるじゃんか!」
「おーこわ。お前マネジャーのくせに手際悪いんだよ。だから仕事溜まんの。」
「うっさいなぁー。なんでいんのよ。早く自分の部署戻ってくださいー。」
こんな夜中に私に嫌味言って絡んで来るこの男は営業部で同期の松田直樹。180越えの長身で切れ目なこいつはミステリアスイケメンと他の女性社員には人気らしい。だるそうに長めの髪をかきあげながら低めの声でミスを指摘されるのが最高っ!とトイレで女性社員が騒いでるのを聞いたことがある。私は全くそうは思わないけど。
「もうほんとに忙しいんだからちょっかいかけないでよね!てかあんただって帰れてないじゃんか!人の文句言ってないで自分の仕事の心配しなさいよ!」
「ばーか。俺はもう仕事終わってさっきまで上司と飯行ってたから。誰かさんとは違うんで。」
「じゃあなんで会社戻ってきてんのよ。」
話しながら髪をかき上げる松田は私の書類をパラパラとめくってる。
「お前がどうせこうやってダラダラしてると思ってからかいに来たんだよ笑。案の定仕事に埋もれてんな。」
「はぁ!?そんな事のために戻ってきたの?馬鹿じゃない!こっちは忙しいのに!」
「うっせ。夜になっても元気は残ってんだな。手伝ってやろうか?」
「いいし!これくらい1人ですぐ終わりますー。あんたは早く帰んなさいよ!」
手伝うかなんて言われてちょっとしたプライドが傷ついた私は松田の背中を押してエレベーターの方に追いやる。どうせほんとに手伝うなんてしないくせに。
「ばかそんな押すなよ、分かったって帰るから。」
「お出口はあちらです。さようなら。」
松田に背を向けて自分のデスクに戻る私に後ろから松田の声がかかった。
「あんま遅くなんなよー!終電逃したら泊まるとこねーだろ。」
「うっさいなーー!早く帰んなよ。」
「・・・」
振り返らず叫んでデスクに着く頃には松田の声がしなくなった代わりにエレベーターが閉まった音がした。
別にこんなに忙しいのは今日に限ったことじゃない。最近ずっとこんな感じ。残りの人生毎日こんなんじゃやってらんない、そう思いながらもこうやってまた深夜まで残業。時計を見ながら後どれくらいで終わるか考えているとスマホが鳴った。
📞「もしもし京花ー?今どこ?まだ会社?」
📱「夏希じゃーんまだ会社だよ〜泣、ほんと
に終わんない。」
📞「あははっ笑。さすがマネジャーは大変
だねぇ。で忙しいところ悪いんだけど明
後日の金曜ひま?」
電話してきたのは同期の長谷川夏希。経理部で課は違うけど入社式で席が隣同士になり、そこからすぐに意気投合して今ではこうやって頻繁に連絡を取りあってる。ザ・女の子っていう可愛い見た目の夏希はサラサラの巻き髪に華奢な体で男性社員から結構な人気だったりする。まあ私は彼女とは真逆でいつも髪は高めに縛ってパンツスタイルのいかにも仕事女って感じだからモテないんだろうけど。
📱「金曜?んー夜7時以降ならなんとか暇か
なぁ。またいつものとこ飲み行く?」
📞「暇なら強制参加ね!夜8時から駅前のイ
タリアンのお店集合で!地図送っとくか
ら!」
📱「イタリアン?珍しくない?いつもの居酒
屋じゃダメなの?」
📞「うちら2人で飲むんじゃないよ笑
合・コ・ン!頼んだよー」
📱「はぁぁ!?合コン??ちょっ、待って!
どゆk」
📞ツーツツーツ…
「あっ切ったし。もうなんで切んのさ、合コンなんて行かないよ!知らないからね!」
行くもんか。こんな忙しい仕事の時間と睡眠時間削って行くわけないじゃん。第一、男は当分いらないし。夏希の合コン好きには付き合わないからね!!
ーそして金曜日ー
「はーい!みんなグラス持った??今日は楽しく飲んでいきましょ!かんぱーーい!!」
皆「かんぱーーい!!ワイワイ」
なんで、なんでこうなったんだろ。10人くらいで男女が楽しそうにお喋りしながら乾杯している。そしてその中に私もいる。隣に座る夏希がお酒が進んでいない私を見て耳打ちしてくる。
「ほらっ京花。せっかく来たんだから楽しんで!ね!」
「なんで来ちゃったんだろ。」
そう、あれからまんまと夏希からの鬼LINEとただ飲みに乗せられて合コンに顔を出してしまった私はあからさまに人数合わせですと言った顔でハイボールを喉に流し込む。
男「あっ!そういやまだ後1人来るから!」
はぁー。適当に飲んで帰ろ。そう思いながらこのつまんない場で誰かがなんか言ってるのも聞かずになんとか空気と同化しようとする。まあ30分飲んで急用だって言えば夏希も帰してくれるでしょ。そんな慣れない合コンに食欲も湧かないでいると、
「すいませんっ!遅くなりました!」
男「おせ〜よ、涼!もう乾杯終わったし」
「先輩ほんとすいません!仕事終わんなくて」
誰が来たらしく一段と場がうるさくなった。最初からいた男の人たちの顔もよく見ていない私は顔を上げる気にもならないけど、なんとなくいい声してるな、なんて思って少し目線を今来た彼に送ってみた。
「初めまして!黒岩涼太です!よろしくお願いします!」
皆「イェーーイ!!飲も飲も!」
トイプードル。彼の第一印象はまさにそれ。ふわっと焦げ茶の髪が天然なのかパーマなのかちょっとくるってなっていて前髪から覗く瞳は子犬みたいにくりっと丸くてキラキラして見えた。そんなに背は高くなさそうだけど顔が小さいのかスタイルがよく見える。少しネクタイを緩めながら私から遠い席に座った彼は周りにペコペコしながら走ってきた汗を拭いてる。そんな彼を何となく見ていると、バチッと思いっきり視線があってしまい、慌てて視線をそらしてお酒を流し込んだ。
それが彼との最初の出会い。特に何も思わなかった彼と私がこれからあんな風になるなんてその時の私には全く想像も出来なかった。
宮原京花28歳、現在商社で開発マネジャーやってます。
絶賛未婚独身フリー、もう最後に恋愛したのは2年前。これでも大学時代から6年付き合った彼氏だったけど色々あってお別れした。もう振っ切れたけどその時から男はもういらない、そう思って仕事に打ち込んできたはずなのに…
「なんでこんなに仕事多いわけ!?」
スマホの時計が23時になりそうなのに私は自分の前に山積みになった書類の山を見上げてうなだれる。仕事に突っ走ってきたおかげで開発マネジャーまで昇進できてまあまあ結果も残してる。でもだからこその仕事量に涙が出そう。
「大変そうだな笑。なんでこんなに山になんだよ笑」
「あっ、ちょっと触んないでよ!崩れるじゃんか!」
「おーこわ。お前マネジャーのくせに手際悪いんだよ。だから仕事溜まんの。」
「うっさいなぁー。なんでいんのよ。早く自分の部署戻ってくださいー。」
こんな夜中に私に嫌味言って絡んで来るこの男は営業部で同期の松田直樹。180越えの長身で切れ目なこいつはミステリアスイケメンと他の女性社員には人気らしい。だるそうに長めの髪をかきあげながら低めの声でミスを指摘されるのが最高っ!とトイレで女性社員が騒いでるのを聞いたことがある。私は全くそうは思わないけど。
「もうほんとに忙しいんだからちょっかいかけないでよね!てかあんただって帰れてないじゃんか!人の文句言ってないで自分の仕事の心配しなさいよ!」
「ばーか。俺はもう仕事終わってさっきまで上司と飯行ってたから。誰かさんとは違うんで。」
「じゃあなんで会社戻ってきてんのよ。」
話しながら髪をかき上げる松田は私の書類をパラパラとめくってる。
「お前がどうせこうやってダラダラしてると思ってからかいに来たんだよ笑。案の定仕事に埋もれてんな。」
「はぁ!?そんな事のために戻ってきたの?馬鹿じゃない!こっちは忙しいのに!」
「うっせ。夜になっても元気は残ってんだな。手伝ってやろうか?」
「いいし!これくらい1人ですぐ終わりますー。あんたは早く帰んなさいよ!」
手伝うかなんて言われてちょっとしたプライドが傷ついた私は松田の背中を押してエレベーターの方に追いやる。どうせほんとに手伝うなんてしないくせに。
「ばかそんな押すなよ、分かったって帰るから。」
「お出口はあちらです。さようなら。」
松田に背を向けて自分のデスクに戻る私に後ろから松田の声がかかった。
「あんま遅くなんなよー!終電逃したら泊まるとこねーだろ。」
「うっさいなーー!早く帰んなよ。」
「・・・」
振り返らず叫んでデスクに着く頃には松田の声がしなくなった代わりにエレベーターが閉まった音がした。
別にこんなに忙しいのは今日に限ったことじゃない。最近ずっとこんな感じ。残りの人生毎日こんなんじゃやってらんない、そう思いながらもこうやってまた深夜まで残業。時計を見ながら後どれくらいで終わるか考えているとスマホが鳴った。
📞「もしもし京花ー?今どこ?まだ会社?」
📱「夏希じゃーんまだ会社だよ〜泣、ほんと
に終わんない。」
📞「あははっ笑。さすがマネジャーは大変
だねぇ。で忙しいところ悪いんだけど明
後日の金曜ひま?」
電話してきたのは同期の長谷川夏希。経理部で課は違うけど入社式で席が隣同士になり、そこからすぐに意気投合して今ではこうやって頻繁に連絡を取りあってる。ザ・女の子っていう可愛い見た目の夏希はサラサラの巻き髪に華奢な体で男性社員から結構な人気だったりする。まあ私は彼女とは真逆でいつも髪は高めに縛ってパンツスタイルのいかにも仕事女って感じだからモテないんだろうけど。
📱「金曜?んー夜7時以降ならなんとか暇か
なぁ。またいつものとこ飲み行く?」
📞「暇なら強制参加ね!夜8時から駅前のイ
タリアンのお店集合で!地図送っとくか
ら!」
📱「イタリアン?珍しくない?いつもの居酒
屋じゃダメなの?」
📞「うちら2人で飲むんじゃないよ笑
合・コ・ン!頼んだよー」
📱「はぁぁ!?合コン??ちょっ、待って!
どゆk」
📞ツーツツーツ…
「あっ切ったし。もうなんで切んのさ、合コンなんて行かないよ!知らないからね!」
行くもんか。こんな忙しい仕事の時間と睡眠時間削って行くわけないじゃん。第一、男は当分いらないし。夏希の合コン好きには付き合わないからね!!
ーそして金曜日ー
「はーい!みんなグラス持った??今日は楽しく飲んでいきましょ!かんぱーーい!!」
皆「かんぱーーい!!ワイワイ」
なんで、なんでこうなったんだろ。10人くらいで男女が楽しそうにお喋りしながら乾杯している。そしてその中に私もいる。隣に座る夏希がお酒が進んでいない私を見て耳打ちしてくる。
「ほらっ京花。せっかく来たんだから楽しんで!ね!」
「なんで来ちゃったんだろ。」
そう、あれからまんまと夏希からの鬼LINEとただ飲みに乗せられて合コンに顔を出してしまった私はあからさまに人数合わせですと言った顔でハイボールを喉に流し込む。
男「あっ!そういやまだ後1人来るから!」
はぁー。適当に飲んで帰ろ。そう思いながらこのつまんない場で誰かがなんか言ってるのも聞かずになんとか空気と同化しようとする。まあ30分飲んで急用だって言えば夏希も帰してくれるでしょ。そんな慣れない合コンに食欲も湧かないでいると、
「すいませんっ!遅くなりました!」
男「おせ〜よ、涼!もう乾杯終わったし」
「先輩ほんとすいません!仕事終わんなくて」
誰が来たらしく一段と場がうるさくなった。最初からいた男の人たちの顔もよく見ていない私は顔を上げる気にもならないけど、なんとなくいい声してるな、なんて思って少し目線を今来た彼に送ってみた。
「初めまして!黒岩涼太です!よろしくお願いします!」
皆「イェーーイ!!飲も飲も!」
トイプードル。彼の第一印象はまさにそれ。ふわっと焦げ茶の髪が天然なのかパーマなのかちょっとくるってなっていて前髪から覗く瞳は子犬みたいにくりっと丸くてキラキラして見えた。そんなに背は高くなさそうだけど顔が小さいのかスタイルがよく見える。少しネクタイを緩めながら私から遠い席に座った彼は周りにペコペコしながら走ってきた汗を拭いてる。そんな彼を何となく見ていると、バチッと思いっきり視線があってしまい、慌てて視線をそらしてお酒を流し込んだ。
それが彼との最初の出会い。特に何も思わなかった彼と私がこれからあんな風になるなんてその時の私には全く想像も出来なかった。
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