俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
落ちこぼれとエリート
東京郊外にある郡司総合病院。地域医療支援病院にも指定されており、様々な診療科の入る巨大病院だ。
中でも心臓血管外科分野において実績があり、県内外から多くの患者を受け入れるなど心臓血管外科手術の症例数は国内でもトップレベルを誇る。
そんな郡司総合病院の小児科病棟で医療クラークとして働く私――島野芙美は勤続六年目の二十六歳。
仕事内容は医師や看護師のサポート、入退院する患者の手続きやカルテ管理など多岐に渡り、病棟専属の事務員としてナースステーションに駐在している。
医療行為には直接関与できないが、医師や看護師の業務負担を減らして患者の診療や治療に専念できるよう、陰ながら医療現場を支えるこの仕事が私は好きだ。
「――芙美ちゃん。ここ空いてる?」
午後一時。最上階にある職員専用の食堂で昼食を取っていると、小児科医の成田未華子先生に声を掛けられた。
「空いていますよ。どうぞ」
「ありがとう」
左胸のポケット上に可愛いうさぎのキャラクターの刺繍が施された薄いピンク色のスクラブ姿の未華子先生が対面の席に腰を下ろす。
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