俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

俺にはよくわからない変化だが、どうやら陸にはそう見えるらしい。

陸が前回来た日を覚えていないが、それほど日にちは経っていないはず。その間に俺と芙美の関係になにか変化があったとすれば、体を重ねたことだろうか。

まさかそれだけで雰囲気が変わったのか? 芙美の俺の呼び方は変わったが。

「やっぱり芙美ちゃんはもう早瀬さんのものなんだなぁ」

沈んだ声でぼやく陸の様子に、やっぱりなと思う。

こいつは芙美のことが好きだ。鈍感な彼女は気付いていないだろうが俺にはすぐにわかった。まぁ、だからどうしたって話だが。

正直なところ陸のことはあまり脅威に感じていない。でも、あの男――山之内は別だ。

数日前の仕事終わり、芙美のもとに実家の病院の医師が会いにきて、これからふたりで食事に行くというメッセージを成田から貰ったときは胸がざわついた。

そのあとすぐに芙美からも知人と食事に行くという連絡が入り、とっさに食事場所を尋ねていた。すぐに返信が届き、店名を見て腹が立った。

あの女は、俺と初めて一緒に行った店に別の男を連れて行くつもりなのか?

俺の中でぶちっとなにかが切れる音がして、気が付くと芙美たちが向かう店に向かって走っていた。

ふたりがまだ病院の近くにいたこともありすぐにその姿を見つけることができた。すると山之内が芙美の連絡先を聞こうとしていたので、すぐに声を掛けて芙美を引き離した。
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