俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

「いえ、陸くんは来ません。私と幸也さんのふたりです」
「それにしては随分と作ったな。腹でも減ってるのか」
「あっ、いえ、えっと……」

どうやら私が食べたくてこんなにたくさんの料理を作ったと思われたらしい。そうではなくて、幸也さんにたっぷりと食べてもらいたくて作ったのだ。

「着替えてくるから、腹減ってるなら先に食べてていいよ」

そう言って幸也さんはリビングを出ていった。パタンと扉の閉まる音が静かに響く。

表情も言動もいつも通りだ。未華子先生は、幸也さんが落ち込んで帰ってくるだろうと言っていたけれど、そんな素振りは少しもない。すでに切り替えができているのだろうか。

しばらくしてラフな部屋着に着替えた幸也さんが戻ってくる。

「先に食べてていいって言っただろ」

ダイニングテーブルのイスに腰掛けたまま、料理に手をつけていない私を見て彼が呟いた。そもそも私はお腹が空いていたわけではないのだけれど……。

その後、食事を始めたもののやっぱり幸也さんに落ち込んでいる様子は見られない。たくさん作った食事もすべてきれいに食べてくれたほど食欲もきちんとあるようだ。

「ごちそうさまでした」

空になったお皿を持って幸也さんが席を立ち、キッチンに向かった。それからリビングを出ていこうとするので「待ってください」と思わずイスから立ち上がる。

「どうした?」

幸也さんが振り返った。
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