俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「えっと、ですね。あの……」
呼び止めたものの、自分でもその理由がわからない。
私とは違って幸也さんは強い人だ。未華子先生はああ言っていたけれど、悲しい出来事があったとしても彼は自分の力で立ち直ることができるはず。
それでも、なんとなく今の幸也さんをひとりにしたくないと思った。
「少しだけお話しませんか。ソファにでも座って、ゆっくりと」
「いいけど、その前にお前は早く飯を食え。腹減ってたわりに残してるだろ」
「あっ……はい」
幸也さんのことが心配で、私の方が食欲がなかった。
それでもしっかりと完食してから、すでにソファに座って寛ぎながら雑誌を読んでいた彼の隣に腰を下ろす。
「ホットココアです。よかったらどうぞ」
ふたつのマグカップをソファの前にあるローテーブルに置いた。
「ココアなんて珍しいな。しかもホット。今日の気温的に冷たい方がよかったんだけど」
そう言いつつも幸也さんはマグカップを手に取り、口をつける。ゆっくりと喉に流し込んでいる横顔を、思わずじっと見つめてしまった。
ココアに含まれる成分にはリラックスやストレス解消に効果があるらしい。それに、温かい飲み物には気持ちを落ち着かせる効果もあるのだとか。
調べて、食材の買い物に立ち寄ったスーパーで買ってきたのだが、確かに今日の気温を考えると冷たい方がよかったかもしれない。