俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
幸也さんの表情がこわくて思わず体が縮こまる。私が怒られているわけではないのに、怒られているように感じてしまった。
明日、敏子さんが幸也さんからあまり厳しく注意をされないよう慌てて言葉を付け足した。
「お菓子と言っても敏子さんが食べるわけじゃないですよ。お孫さんがお見舞いに来るからあげたいんだって嬉しそうに話していました」
「ああ、そういえば来てたな。しばらく面会できるような状態じゃなかったが、体調も安定してきたから許可出したんだ。久しぶりに家族に会えたって喜んでたな、敏子さん」
そのときのことを思い出しているのか、幸也さんの口元が優しく綻ぶ。
「もう少し回復できたら退院を考えてもいいんだが、安静にできないんだよなあの人。また容態が悪化したらどうするんだよ」
ため息をこぼした彼は、どうやら敏子さんのことで頭を悩ませているらしい。
やっぱり幸也さんは患者想いのお医者さんだ。
まだ彼のことをあまり知らなかった頃は病気と手術のことしか見ていなくて、患者のことを置いてきぼりにするような冷たい医者だと勘違いしていた過去の私をひっぱたきたい。
彼の受け持ちの患者は敏子さんだけではないはず。きっと、そのひとりひとりのことを常に思い、できることならすべての患者が病を克服できることを願いながら、身を粉にして働いているのだろう。
そんな彼のことが私は好きだ――。