俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

「幸也さんを一番近くで支えられるような人になりたいです」

ふとそんな言葉が口からこぼれていた。

視線を落としているので、隣に座る彼の表情はわからない。

「幸也さんは私と違って強い人です。だから、悲しいことがあってもそれを隠して普段通りに振る舞うことができる。でもたぶんひとりになると、すごく落ち込むんだと思います」

彼が帰宅したときからうっすらと感じていた違和感。表情も言動もいつも通りだったけれど、やっぱり少しどこか違った。具体的にこことは言えないけれど、私にはそう感じたのだ。だから、幸也さんのことをひとりにさせたくないと思い引き留めた。

「急にそんなことを言い出すってことは、俺の担当患者が亡くなったことを誰かから聞いただろ」

鋭い彼は察したらしい。私は静かに頷いた。

「未華子先生に聞きました。幸也さん、きっと落ち込んで帰ってくるだろうから優しく支えて癒してほしいって。でも、なにをしたらいいのかわからなくて……」

いつも通り食事を用意して、彼の帰りを待つことしか思い浮かばなかった。

こんなとき幼馴染の未華子先生なら幸也さんのことを励ますことができるのだろうか。彼もきっと未華子先生の前でなら弱い部分を見せられるのかもしれない。

今夜はこの家に帰ってくるのではなくて、未華子先生と一緒に過ごした方が幸也さんの気持ちは上に向いたのでは……。
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