俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「芙美」
名前を呼ばれて顔を向ければ、肩に腕を回されてグッと体を引き寄せられた。
気が付くと、幸也さんの腕の中にすっぽりと収められている。
「なにもする必要はない。こうしてそばにいてくれるだけでいい」
私を抱き締める彼の腕に力がこもる。
「お前の言うように俺は人前で悲しんだり落ち込んだりするようなタイプじゃない。ひとりでどこまでも沈んで、いつの間にかひとりでまた元の場所まで戻ってくる。今までそうだったから支えとか癒しとかを欲しいと思ったことは一度もなかった」
「幸也さん」
きっとそうやって強く生きてきたのだろう。そう思うと、胸がぎゅうっと切なくなって、彼の背中に腕を回して抱き締め返した。
「でも今日初めて、そういう存在を求めた。お前に会いたかったんだ」
私を抱き締める幸也さんの腕の力が緩くなり、そっと体を離す。
「どうしてかわかるか」
私の顔を覗き込むように見つめてくる彼の顔をまっすぐに見つめ返す。
幸也さんが私に会いたいと思った理由……。
「芙美のことが好きだからだ」
幸也さんの顔がゆっくりと近づいてきて、そっと優しく私の唇を塞いだ。いったん離れてからまたすぐに重なり、啄むように角度を変えてキスが繰り返される。
「私も好きです。幸也さんのこと」
唇が離れたわずかな瞬間に自分の気持ちを伝えれば、愛おしそうに目を細める彼と視線が絡み合う。
どちらからともなく交わしたキスは蕩けるように甘くて、お互いを求めるように絡み合った指にぎゅっと力を込めた。