俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
不穏な影
関東では平年よりも四日ほど遅く梅雨明けした七月の後半。
気温は一気に上昇し、痛いほどの日差しが照り付ける新宿の街を、頭を悩ませながら歩いていた。
「プレゼントなにがいいんだろう……」
つい独り言が漏れてしまう。ここ数日間悩み続けているのだが、これといったものが見つからない。男性に渡すものとなるとなおさらよくわからなかった。
「あいつはお前から貰えるものならなんでも喜ぶだろ。その辺に咲いている花でもいいんじゃないか」
隣でそう呟いたのは幸也さんだ。
私たちは今日、来週に二十三歳の誕生日を迎える陸くんへのプレゼントを買いに来ている。とはいっても幸也さんは私の付き添いで、一緒に選んでほしいと頼んで付いてきてもらったのだ。
けれど……。
「幸也さんなら誕生日になにを貰ったら嬉しいですか」
「特にない」
さっきからずっとこんな調子なのでまったく参考にならない。なんでもいいからプレゼント選びのアドバイスが欲しいのに。
「それじゃあ、医者を目指す陸くんの力になるようなプレゼントはなんだと思いますか」
質問を変えることにした。現役医師である幸也さんだからこそ答えられると思う。
するとここにきて初めて彼が「そうだなぁ」と、ようやく考えるような素振りを見せた。