俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

私の実家は北陸地方にある街で、祖父の代から地元ではわりと有名な総合病院を経営している。父が院長を務め、六つ年上の兄も医師として勤務していて、父の跡を継ぐことが決まっている。

さらに親戚にも医師が多く、島野家の人間は医師になるのがあたり前という環境で育った。だから私も医者にならないといけなかったのに、医学部に落ちてしまった。

浪人して翌年に再び受験をしようとしたものの『お前にはもう無理だ』と父に見放されて以来、〝出来損ない〟や〝落ちこぼれ〟と呼ばれ、まともに口を聞いてもらえなくなった。

進路を変えて医療事務の仕事が学べる専門学校に入学するため上京してからも、しばらく音信不通が続いていたけれど、先週突然父から連絡が来て『見合いをしろ』と命令のように言い渡された。

父が言うには、『医者になれないのならば、せめて優秀な医者のもとに嫁に行け』ということらしい。

「――そんな理由で結婚させられちゃうんだ」

私の話を聞いた未華子先生が気の毒そうな視線を向けてくる。
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