俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「こっちはどうだ」
今着けている指輪を私の指からするりと外し、別の指輪を手に取った幸也さんがそれを私の薬指にはめる。
今度はウェーブタイプのもので、真ん中にだけダイヤが留められていた。
そのあともいくつか指輪を試着させてもらい、いったん店を出る。
「芙美に一番似合うものがいいから他の店も見てみるか」
幸也さんが私の手を取って歩き出すので、「ちょっと待ってください」と彼の腕を掴んだ。
「本当に指輪を買うんですか」
突然のことだったのでまだ動揺している。立ち止まった彼に確認をするように尋ねれば、「買うけど」とすぐに返事が戻ってくる。
「結婚しているのに指輪がないってのもおかしいだろ。俺は勤務中には着けないけど、芙美はどうなんだ」
既婚者の事務員を思い出してみる。基本的にアクセサリー類は禁止されているけれど結婚指輪は問題なかったように思う。着けている人もいれば外している人もいるはず。
「私も勤務中は指輪をしない方が仕事に集中できるかもしれません。消毒したり手を洗ったりすることも多いので、指輪があるとたぶん気になってしまうと思うので」
「そうだよな。でも、プライベートでは着けられるだろ。今日みたいに俺と出掛けるときとか」
「はい」
「それじゃあやっぱり指輪は必要だ」
私の手を繋いだまま幸也さんが再び歩き出す。彼が向かっている先にはまた別の高級ジュエリーブランドの店がある。