俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「それと、これは幸也さんから」
「えっ。早瀬さんも俺にプレゼントを⁉」
信じられないと呟く陸くんに幸也さんから預かったプレゼントを手渡す。受け取った陸くんがさっそく開けると一冊の本が出てきた。
「〝心療内科医によるメンタルを強くするための十か条〟」
本を手に持ちながら、ゆっくりとタイトルを読み上げる陸くん。
「……早瀬さん、俺にこれを読めってことかな」
「う、うん。そうだね。幸也さんなりのエールだと思うよ」
私からのプレゼントを見たときとはあきらかにテンションが下がった陸くんが、本をそっとカバンにしまった。
お好み焼き店を出た頃には夜の九時を回っていて、このくらいの時間になるとほんの少しだけ暑さも和らぐ。今日は風もあるからかもしれない。
「陸くんありがとう。家まで送ってくれて」
「いえいえ。俺が少しでも長く芙美ちゃんと一緒にいたかっただけだから」
マンションの前に到着してから少し立ち話をしていたが、私も陸くんも明日はそれぞれ仕事と大学があるのでそろそろ別れることにした。
けれど、陸くんがなかなか動こうとしない。どうしたのだろうと思っていると、彼は突然なにかを決意したかのように私のことをまっすぐに見つめる。