俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「芙美ちゃんにひとつだけお願いしていもいいかな。誕生日だからこれくらい許して」
陸くんが一歩近づいて腕を伸ばすと、私の体をそっと引き寄せた。背中に回った腕にぎゅっと力がこもり抱き締められる。
「り、陸くん⁉」
「ごめん。少しでいいから」
私の首筋に顔を埋める陸くん。むかしは私よりも背が低かったのに、いつの間にかすっかり抜かされてしまい、あたり前だけど彼も成長したのだと改めて思った。
私のことを抱き締めるというよりも抱きついている陸くんの頭にそっと手を伸ばして髪を優しく撫でる。すると彼の腕にさらに力がこもり、痛いくらいにぎゅうっと抱きつかれた。
しばらく耐えていたけれど限界かもしれない。
「陸くん。ちょっと苦しい」
「あっ、ごめん」
陸くんがパッと腕を離して、私から距離を取る。なにかを言いたそうに私の顔を見ては視線を逸らしてを繰り返していたが、大きく息を吸って吐き出しただけでなにも言わなかった。
「芙美ちゃん。俺、頑張って医者になるよ。だから俺のこと、ちゃんと見ていてね」
「もちろんだよ」
「今日、芙美ちゃんにたくさんパワーを貰って元気が出た。明日からまた頑張る」
白い歯を見せてにっこりと笑う陸くんの笑顔は子供の頃のままだ。本来の明るさを少しは取り戻せたのだろうか。その力になれたのなら嬉しい。