俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「じゃあ俺は帰るね。おやすみ、芙美ちゃん」
陸くんが手を振りながらこの場を歩き去る。見えなくなるまでその背を見送ると、私もマンションのエントランスに向かおうと振り返った。
すると仕事からちょうど帰ってきたところだろうか。少し離れた場所に立っている幸也さんの姿を見つけて、急いで駆け寄る。
「お疲れさまです、幸也さん。私も今、陸くんと食事をして帰ってきたところで……幸也さん?」
彼の様子がどこかおかしいことに気が付く。表情が普段よりも固い。疲れているのだろうか。
「家に帰りましょう。あっ、ご飯まだですよね。すぐになにか――」
「芙美」
幸也さんが私の腕を痛いくらいの強さで掴んだ。そのままグイっと引き寄せると、私の唇に自身のそれを押し付けてくる。
突然のキスに目を見開く。ここは外で誰の視線があるかわからないのに。
「お前はどうして俺以外の男にあっさりと抱き締められてるんだ」
唇を離して、私を見つめる幸也さんの表情からは静かな怒りが見て取れる。もしかして、さっきの陸くんとのやり取りをこの場所から見ていたのだろうか。
「男って……陸くんですよ」
「あいつでもダメだ。俺以外の男に触れさせるな」
すぐにまた唇を塞がれる。彼の手が後頭部にが回り、逃がさないとばかりに強く引き寄せられると、噛みつくようなキスが私を襲った。