俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
***
仕事を終えて、職員玄関から外に出た私は帰宅の途につく。ちょうど病院の敷地を出たところで、まるで待ち伏せをしていたかのように見知った女性が現れて、行く手を遮られた。
「こんにちは。早瀬さんの奥さん」
幸也さんの恩師である神名先生の娘の智花さんだ。前回会ったときの攻撃的な彼女の記憶が蘇り、つい身構えてしまう。
「ねぇ、あなたの名前なんだったかしら」
「芙美です」
「ああ、そうそう思い出した。芙美さんね。私のことは知ってる?」
「はい。この前お会いしたあとで幸也さんから聞きました」
智花さんは私に会いに来たのだろうか。でも、どうして? 彼女の意図がわからず、ただただ困惑してしまう。
「今少しだけ時間ある? すぐそこのカフェで話をしない?」
「話ですか?」
正直、初対面のときから私に攻撃的な態度を取ってくる彼女とふたりきりで話をするのはこわい。けれど断ることもできずに頷いてしまった。
病院の近くにあるカフェに入店してからそれぞれ飲み物を注文すると、壁際の隅にある四人掛けのテーブル席に腰を下ろす。
アイスコーヒーに口を付けてから、智花さんがさっそく話を切り出した。