俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

幸也さんと一緒に過ごしてきた年月が私と彼女とでは違うのだから当然のことなのに。これから先も幸也さんに関することでは未華子先生には適わないのではないかと思ったら胸が苦しくなった。

「あのふたりって幼馴染だけの関係だと思う?」

声のトーンを落とした智花さんの言葉に、弾かれたように顔を上げた。

「どういう意味ですか?」
「その様子だとやっぱり知らないのね」

頬杖をついた智花さんに「知りたい?」と尋ねられて頷いた。赤いリップを引いた彼女の唇の端が持ち上がる。

「じゃあ教えてあげる。早瀬さんと成田さんって医学部時代に交際していたのよ」
「えっ」
「でも、お互いにやっぱり今は仕事に集中したいからって、初期研修前に別れたの」

幸也さんと未華子先生が恋人同士だった……。

仲の良い幼馴染だとばかり思っていたふたりに交際していた過去があったことを知り、動揺してしまう。そんな私に追い打ちをかけるように智花さんがさらに言葉を続ける。

「早瀬さんも成田さんもお互いに嫌いになって別れたわけじゃないから、まだ好きなんじゃないかなと思って。それを芙美さんが知っているのか気になったの」
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