俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
でも、はっきりとさせておいた方がいいのかもしれない。どんなに片想いを続けても、私の気持ちが早瀬先生に通じることはないから、父の決めた相手と結婚する前にきっぱりと諦めないと。
そもそも早瀬先生ほど優秀な外科医に、出来損ないの私は不釣り合いだ。彼にはやはり院内でも噂されているように、未華子先生のような女性がお似合いだから……。
「ねぇ、芙美ちゃん。そのお見合いはどうしてもしないとだめなの? 気が乗らないなら断ればいいじゃない」
未華子先生の言葉に首を横に振って答える。
「断れません。私、子供の頃から父がこわいんです」
将来は医者になるよう厳しく育てられた。
優秀な兄といつも比べられて、テストの点数や成績が悪いと叱られた。頑張って成果を出しても、それがあたり前だと言われて褒めてすらもらえなかった。
今回のお見合いの件も、断ろうものなら父に叱り飛ばされるに違いない。
「だから、父の決めた結婚を受け入れるしかないんです」
自分に言い聞かせるように口にして、無理やりにでも笑顔を作った。そうしないと鼻の奥がツンとして、今にも視界が揺らめいてしまいそうだ。