俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「えっ……」
なにが起きたのだろう。気が付くと走り出してバス停に向かっていた。
そこには三、四人ほどの人がいて、倒れた男性のことを心配そうに囲んでいる。男性の年齢は四十代ぐらいだろうか。大柄でふくよかな体格をしている方だ。
「どうしたんですか?」
近くにいる女性に状況を尋ねた。
「この方が突然、胸を押さえて苦しそうにしたんです。そのまま倒れてしまって」
彼女はおろおろと声を震わせながら教えてくれた。
他の方たちも同じように動揺しているのか、倒れている男性のことを心配そうに見つめているが、どう行動を起こせばいいのかわからず立ち尽くしている。
男性の横に膝をつくと、肩を軽く叩いて声を掛けた。けれど反応がない。意識を失っていて、呼吸もしていない。男性の首のつけ根に人差し指と中指を置くけれど、脈が感じられなかった。
「救急車を呼んでください」
近くにいる人たちに声を掛ければ、その中のひとりの女性が「わかりました」とスマホを取り出す。
「それと、すぐそこにあるマンションにAEDがあるはずです。どなたか取りに行っていただけませんか」
ここから見える位置に私の住んでいるマンションがある。徒歩五分もかからない距離だ。