俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

両肘をまっすぐに伸ばして、男性の胸が五センチほど沈む力で垂直方向に圧迫する。それを繰り返すけれど、想像以上に体力が必要で途中から腕が痛くなってきた。

それでもここでやめてはいけないと心臓マッサージを続ける。

ふと思い出したのは、病院内で倒れた患者に幸也さんが心臓マッサージを行っていた姿。

私が彼に惹かれたきっかけとなった出来事だ。

額に汗を滲ませながら懸命に心臓マッサージを続けていた彼のように、私もこの男性を助けたい。

必死に心臓マッサージを続けていると、AEDが到着した。

「ありがとうございます」

走って取りに行ってくれた男性にお礼を言って、AEDを受け取った。

電源を入れて、音声ガイドの指示に従い操作を始める。男性の前胸部に電極パッドを二枚、心臓にはさむようにして貼った。

「みなさん少し離れてください」

ボタンを押すと、一回目の電気ショックが行われた。

再び胸骨圧迫を続けるよう指示があり再開する。

数分後に二回目の電気ショックが行われたとき、男性の瞼が微かに動いた。周囲から「おおっ」と声が上がる。

そのタイミングで遠くから救急車のサイレンの男が聞こえて、それが徐々に大きくなると救急隊が到着した。

それからは処置を引き継ぎ、男性は救急車に乗せられると、病院まで運ばれていった。
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