俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
なんとなく傷の理由を言い淀んでいると、幸也さんは剥がした絆創膏をまた貼り直した。
「どこで転んだ?」
彼の中では私の傷は転んだことにより負ったものだと思っているらしい。
「もしかして、誰かに突き飛ばされたのか」
「えっ、いえ、違います」
なんだか話が物騒な方向にいきそうなので首を大きく横に振り、本当のことを話す。
「この傷は、その……心臓マッサージを行ったときにできたものです。アスファルトに膝をついて真上から強く押していたので」
「心臓マッサージを? それはどういう状況だ」
尋ねられて、仕事からの帰り道に起きた出来事を幸也さんに打ち明ける。
「マンションの近くのバス停で男性が倒れるのを見たんです。意識も脈もなかったので心臓マッサージを行いました。マンションからAEDを持ってきてもらったのでそれを使ったところ意識が回復したので、そのあとは到着した救急隊の方に処置を引き継ぎました」
「そうか……」
幸也さんは頷くと目線を落とし、顎に手を添えて眉間に皺を刻む。なにやら考え込んでいるようだが、しばらくして私に視線を戻した。
「それは何時頃の話だ」
「時間ですか? たぶん六時頃でしょうか」
正確にはわからないけれど定時で仕事を終えて、自宅付近まで歩いてきていたのでだいたいそのくらいだろう。