俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「その男性はスーツを着ていたか。年齢は四十代ぐらいで、背は高く小太りの」
「はい。確かそんな見た目だったかと……」
どうして幸也さんが知っているのだろう。
「芙美が心臓マッサージをした男性だが、午後六時半に郡司総合病院に運ばれてきた患者だと思う。症状や特徴が一致している」
「えっ」
「倒れた原因は急性心筋梗塞だ。糖尿病の持病のある男性で、もともとうちの病院で治療をしていたらしい」
「そうなんですか?」
救急車の行先までは知らなかったけれど、あの場所から一番近い病院で、なおかつ受診歴もあるので郡司総合病院に運ばれたのだろう。
「緊急手術になって俺が執刀した」
「幸也さんが⁉」
思わず目を見開いてしまう。まさか私が心臓マッサージをした男性の手術を幸也さんがしたなんて。
「男性は無事ですか」
「ああ。今はICUに入っているが、容態も安定している。このまま順調に回復できれば一般病棟にも移れるし、社会復帰もできるはずだ」
「そうですか。よかった」
ホッと胸を撫で下ろす。ずっと気がかりだったけれど、一命は取り留めたらしい。あとは彼の回復力を信じるだけだ。
「男性が運ばれてきたときに救急隊からの報告で聞いたんだ」
ふと幸也さんの声が聞こえて、隣に座る彼に視線を向ける。