俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない


「――メス」

午後二時。俺の手にメスが手渡されてオペが始まる。

患者は四十代男性。大動脈弁狭窄症という弁の開きが悪くなり、心臓内の血流調整がうまくいかなくなる病気で入院中の患者だ。

人工弁置換術といって、悪くなった弁を人口のものに取り換えるオペが行われる。執刀医は俺だ。

メスを握った手で患者の胸を開け、大動脈を剥離。このオペでは心臓の動きをいったん止めて処置が行われるため、血管にチューブを挿入して、人工心肺につないだ。

開始から三十分が経過。

問題となる弁の切り取りに入るが、その角度ひとつでも重要になってくる。慎重にならなければならないが、心臓の手術は時間との闘いだ。短ければ回復は早いし、時間がかかればかかるほど命が危険にさらされる。

弁の切除を終えたあとは人工弁の取り付けに入った。残った弁の縁と人工弁を縫い合わせていくのだが、ここでもまた糸の掛け方を少しでも間違えれば心臓の組織を傷つけるため、正確に縫い合わせなければならない。

開始から約二時間。

人工弁を無事に装着してオペが終わった――。


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