俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
術後しばらくは経過観察をしていたが患者の容態が安定していたこともあり、この日は帰宅することにした。
定時はすでに過ぎている。私服に着替えた足で向かったのは、あまり足を運ぶことがない小児科病棟。
「あれ? 早瀬くんだ。どうしたの?」
ナースステーションには成田の姿があり、突然訪れた俺に驚いているようで目を丸くさせている。
「あっ、もしかしてお昼のときに気にしていたこうたくんの様子を見に来た?」
「いや、その子のことも気にはなるが別の用事だ」
ナースステーションを見回して目的の人物を探すが、どこにも見当たらない。やはりもう帰ってしまったのだろう。
「なぁ、あいつもう帰ったよな」
「あいつって?」
「島野」
探している人物の名前を口にすれば「芙美ちゃんのこと?」と、成田が聞き返してくる。島野なんて苗字は、ここにはあの女しかいないだろ。
「芙美ちゃんならプレイルームにいるよ」
どうやらまだ院内にいるらしい。
「それどこにある?」
「この廊下をまっすぐ進んで突き当たりを右」
「了解。ちょっと行ってくる」