俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

そういえば、ここまで来る廊下の壁にも同じような折り紙の作品が飾られていたのを思い出した。

「これ全部お前が折ったの?」
「はい。壁を明るく飾ることで、ここに来る子供たちの気持ちが少しでも上を向けばいいなと思って」
「へぇ」

事務の仕事だけでなく、そんなことまで気を配っているのか。

「ちょっと見せて」
「あっ!」

これから壁に貼り付けるつもりだったのだろう。島野が持っている折り紙を奪って、まじまじと見つめた。

「よくできてる。お前、手先が器用だな」
「いえ、そんなことは……」

褒めてやれば、俺から視線を逸らした島野が首を振って謙遜する。

「手先の器用さなら早瀬先生の方が上だと思います。難しいオペをたくさんしているから」
「オペは手先の器用さはそれほど重要でもないと俺は思うけどな。まぁ、器用にこしたことはないんだろうけど、それよりも大事なのは集中力」
「集中力?」
「特に心臓の手術は長時間に渉ることが多いから、集中を切らさないことが大切だ」
「なるほど」

頷いた島野がふと顔を上げる。俺の胸くらいの位置に目線がある彼女を見て、小柄な女性だと改めて思った。

普段は職員食堂で成田を含めた三人で昼食を取ることが多く、それ以外ではあまり島野と関わったことがない。

座ったときの目線しか知らないため、こうしてお互いに立って話をしていると彼女の目線の位置が俺よりもだいぶ下にあるのだと改めて気付いた。
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