俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
どうやら自分のことよりも俺の心配をしていたらしい。こういうときは自分のことだけを考えていればいいのに、他人のことを優先させてしまうタイプのようだ。
そんな彼女に思わずため息がこぼれてしまう。
「余計なことは考えなくていいから、お前は俺を信じてろ。俺の力になってくれるなら、俺もお前の力になるから」
「早瀬先生」
「とりあえず父親に見合いはしないと連絡をしておけ。結婚したい人がいるから今度連れていくって」
強引に進めていけば、島野は考えるような素振りを見せたあとで「わかりました」とようやく頷いた。
「早瀬先生。よろしくお願いします」
「おお。任せとけ」
島野の表情がここに来て初めて明るくなった。
ふと職員食堂で見た、すべてを諦めたように切なく笑った彼女を思い出す。
助けてあげたい――。あのとき、柄にもなくそんな感情が芽生えた。
島野との結婚は神名先生の娘との結婚を断るためだ。でも、それ以上に俺は彼女のことが気になっているのかもしれない。