俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
早瀬先生が郡司総合病院の院長であり、心臓血管外科の名医でもある郡司史貴先生に期待をされている存在だというのは、院内では有名な話だ。
未華子先生から聞いたけれど、彼くらいの年齢になると一般外科医ならば一通りの手術ができるようになっている頃だが、心臓外科はそうではないらしい。とても緻密で繊細な技術が必要になるため、一人前の執刀医になるまでの道のりが長いそうだ。
その中でも臨床留学経験のある早瀬先生は任されている手術数が多い。郡司院長も彼の実力には期待をしていて、自身が執刀するオペの助手を早瀬先生に積極的に任せるなど、知識を惜しみなく早瀬先生に注ぎ熱心に指導しているのだそうだ。
すでに将来有望な若手外科医としてメディアなどでも取り上げられたこともあるほど、同年代の心臓血管外科医の中で早瀬先生は抜きん出た実力の持ち主なのだ。
父が姿勢を正して早瀬先生のことをまっすぐに見つめる。それから頭を下げた。
「早瀬くん。芙美のことをよろしく頼む。出来の悪い娘だが、早瀬くんの力になれることもあるかもしれない」
「それは、私たちの結婚を認めてくださるということでしょうか」
早瀬先生が驚いたように口にすると、「もちろんだ」と父は頷いた。