俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
早瀬先生の視線が私に向かう。予想以上にすんなりと結婚が認められて〝お前の話と違うぞ〟と、その目に訴えられているような気がした。
でも、それは父があっさりと結婚を認めたくなるほど、早瀬先生が医師として優秀だからだと思う。
「芙美から聞いているかもしれないが、島野家は医師の家系だ。私も、私の父も兄弟たちも、芙美の兄や従弟たちもみんな医師をしている」
「もちろん知っています。みなさん優秀ですね」
「だが、そこにいる芙美だけは違う」
今日初めて父の視線が私を捉える。それは、これまで早瀬先生に向けていた友好的なものではなく、鬱陶しいものでも見るような蔑む視線だ。
耐えられなくて、私の目線は自然と下に向かう。
「どういうわけか芙美だけが医者になれなかった。その子だけが出来の悪い落ちこぼれだ。こんな娘でもよければ、結婚してもらえると助かる」
父の言葉を聞きながら、膝に置いた両手を爪が食い込むほどぎゅっと強く握りしめた。
医者になることができず父の期待には応えられなかったけれど、それでも医療の道に進みたいと思ってクラークを目指した。
一生懸命働いていれば、いつか父に認めてもらえる。
そう思っていたのに、やはり父は医者以外の職業についた私のことを疎ましく思っているのだろう。