俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
喉がぐっとしまって、震えそうになる唇を強く噛みしめた、そのとき――。
「失礼ですが、お義父さん。出来が悪いというのは芙美さんに対してあまりにもひどい言い方ではないでしょうか」
隣から早瀬先生の低い声が聞こえた。
「私が心に決めた女性に対してそのような言葉で否定をすることは、たとえ血の繋がった親子といえど見過ごすことができません」
俯いていた顔を上げると、いつにも増して険しい表情を浮かべる早瀬先生の横顔が目に入る。まるで父を敵だとみなして、睨みつけるような鋭い目に焦ってしまった。
私のことを気に掛けてくれたのなら、慣れているから大丈夫なのに。父から罵倒されるのは子供の頃からのことだ。ちょっと我慢をすればいいだけ。
「早瀬先生。私なら別に……」
「芙美は黙っていろ」
ぴしゃりと言われてしまい口を閉じる。早瀬先生が父のことをじっと見据えた。
「芙美さんは優秀ですよ。クラークとしての仕事はもちろんですが、それ以外のことにも気を配ることができ、陰ながら小児科病棟の大きな力になっています」
「早瀬先生……」