俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
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無事に父から結婚の承諾を得た私たちは実家を出て、帰りのタクシーの到着を待っていた。
隣では早瀬先生がスマホの画面を見ながら指でなにやら操作をしているが、もしかして仕事でなにかあったのだろうか。
しばらくすると彼が視線を上げたので、そのタイミングで改めてお礼の気持ちを伝える。
「早瀬先生。今日は本当にありがとうございました」
深く頭を下げれば、彼の手が伸びてきて髪をくしゃりと撫でられた。
「うまくいったな」
顔を上げると、口角を上げてにやりと笑う早瀬先生と目が合う。
「それにしてもお前の父親のどこがこわいんだ。思っていたよりもあっさりと結婚を認めてもらえて、俺としては拍子抜けなんだが」
私が新幹線の中で父はこわい人だとしつこく言ったからだろうか。早瀬先生なりに身構えていたのかもしれないが、彼の前で父は少しもこわい態度を見せなかった。
「それはたぶん、早瀬先生のことを父が気に入ったからだと思います。父は、優秀な人が好きだから……」
私のような出来損ないを父は視界にすら入れようとしなかったし、早瀬先生の前でも子供の頃のように罵倒されてしまった。私は父に嫌われているから。