俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「お前はさっきの俺の話を聞いてたか」
しょんぼりと落ち込む私の頭に早瀬先生の手がポンと乗る。
「お前はもっと自分に自信を持て。それでいつか、あの父親に自分の言葉で言い返せるようになるくらい強くなれ」
そんな日が来るのだろうか。
初対面でも怯むことなく、私なんかのために父に言い返してくれた早瀬先生の姿を思い出す。
私も彼のように強くなりたい。今日は早瀬先生に頼りっぱなしだったから。
彼のおかげで父の決めた相手と結婚せずにすんだし、地元にも戻らなくてよくなった。そしてこれからも郡司総合病院でクラークとして働ける。
すべてのことを良い方向に動かしてくれた早瀬先生には感謝しないと。
「来週は私が頑張ります」
今度は早瀬先生の医学部時代の恩師に結婚の挨拶に行くことになっている。
本当なら自分の娘と早瀬先生を結婚させたかったようなので、婚約者として現れた私のことを恩師はどう思うのだろうかと不安はあるものの、今日の早瀬先生のように私も自分の役目をしっかりと果たさないと。
「さっきの弟の話だけど、その手術をしてくれたのが今度会う神名先生だ」
早瀬先生は少し遠くを見つめながら、そんなことを口にした。