俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

「その新幹線だけど、悪い。さっきキャンセルして、明日の分を取り直した」
「明日ですか?」

突然の報告に理解が追い付かない。早瀬先生はスラックスのポケットに両手を突っ込み、のんびりとした口調で告げる。

「久しぶりにまとまった休日が取れたんだ。お前もまだ休みだろ。それならせっかくここまで足を運んだわけだし、こっちで一泊していかないか」
「一泊って……どこにですか?」

予定では午後三時の新幹線に乗って東京に戻ることになっていた。旅行客の多いゴールデンウィークだというのに、今から泊まれる場所を確保できるのだろうか。

すると早瀬先生がスマホを操作して、画面を見せてくる。

「泊まるところなら今さっき取った。どこも満室だったけど、キャンセルでも出たのか一部屋だけ空いていたから速攻でおさえた」

画面には宿泊先であろう温泉宿のホームページが映っている。その宿名を見た瞬間、思わず自分の目を疑った。

「ここはとても高級な旅館ですよ。本当に泊まるんですか」
「もちろん」

早瀬先生が頷く。

実家を出てからずっと真剣な表情でスマホをいじっていたかと思えば、どうやら旅館の予約を取っていたらしい。

しかもこの旅館といえば、地元でも一・二を争うほど高級な老舗温泉宿だ。
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