俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「早瀬先生。空いている部屋を見つけたからって、ちゃんと金額を確認しましたか」
「あたり前だろ。宿泊料ならカード決済でもう済ませてあるから心配するな。もちろんお前の分もな」
「私のも⁉」
いったいいくらしたんだろう。恐ろしくて値段の確認ができない。
「ほら、タクシー来たぞ」
目の前に到着したタクシーの後部座席の扉が開き、早瀬先生が私の背中を押して車内に押し込む。座席に腰を下ろすと、彼もまた高い背を屈めて乗り込んできた。
私の隣に座ると、運転手に目的の宿名を告げる。そして、私たちを乗せたタクシーは静かに実家を出発した。
*
市街地から山間部の方に向かって進み、しばらくすると目的の旅館に到着する。
早瀬先生の突然の思い付きによる一泊なので、途中で下着などを購入した。ケア用品は旅館に備わっていることをホームページで確認したし、化粧道具の入ったポーチはいつもバッグに入れているので今日も持っている。必要最低限のものは揃えることができた。
タクシーを降りてから旅館の門をくぐる。厳かな雰囲気のある建物はいかにも老舗といった感じだ。
上品な着物姿の年配女性に迎えられてフロントまで案内してもらう。チェックインを済ませたあとは仲居さんの先導で客室に向かった。