俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

本館を出て、きれいに剪定された松などの木々や苔が青々と茂る立派な庭園の中を進んでいく。石畳の上を歩いていると、その先には離れのような建物がいくつかあり、そのうちのひとつが私たちの部屋のようだ。

この旅館は本館の客室だけでも高級仕様なのに、別棟となればさらにグレードアップした特別な客室になる。一室だけ空いていたとはいえ、高額な客室をなんのためらいもなくおさえてしまう早瀬先生はさすがだ。

案内された部屋は、広々とした畳のスペースと、セミダブルのベッドがふたつ並んで置かれたフローリングのスペースがある。

食事の時間や大浴場などの説明をしてから仲居さんが部屋をあとにした。

「芙美。ちょっとこっち来て」

部屋の中と外を繋ぐガラス張りの窓の近くに立っている早瀬先生が私のことを手招きしている。

さらっと名前で呼ばれたことに動揺しながら彼のもとに向かえば、そこにはテラス付きの露天風呂があった。

「これなら誰にも邪魔されず、好きな時間にのんびりとお湯に浸かれるな」

露天風呂に向けていた視線を私に戻し、早瀬先生は頬を緩めて柔らかく微笑む。
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