俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

ここまでされてしまえば先に入るしかない。浴衣と下着を脱いで裸になり、室内シャワーで軽くお湯を浴びてから露天風呂のあるテラスに出る扉を開ける。

ガラス張りの窓にはいつの間にか障子が閉められていて、中からこちらの様子が見えないようになっていた。早瀬先生が配慮してくれたのだろう。

檜風呂のもとに向かい、ゆっくりと肩までお湯に浸かる。

「ふぅ~。気持ちいい」

外はもうすっかり暗闇に包まれているが、露天風呂のまわりはオレンジ色の温かな色味の照明がほんのりと灯っている。

あたりを竹林に囲まれ、上を見れば漆黒の空には月が浮かんでいた。

自然との一体感を味わいながら入る露天風呂は気持ちがいいし、とても贅沢な時間だ。

もしかしたらこれは夢なのかもしれない。ふとそんなことを思い、頬をつねる。痛いので現実なのだろう。それでもはやっぱり信じられなかった。

ついこの前までは、父の決めた相手との結婚を受け入れて、そのあとは仕事を辞めて地元に戻る未来しか私にはないのだと絶望していたのに。

早瀬先生との結婚によりすべてが良い方向に変わった。

片想いしている彼と結婚ができるだけでなく、大好きな仕事をこれからも続けられる。すべてがうまく運びすぎてこわいくらいだ。

この反動で次はなにか良くないことが起こるのではないか……。
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