俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
すぐにこちらに向かって駆け寄ってきた早瀬先生がバスタオルを掴んで私にかける。体を仰向けにされると顔を覗き込まれ、彼の手が頬に触れた。
「お前、のぼせたんだろ」
「……たぶん。すごく、頭がぼーっとします」
先ほどよりも見えるようになったけれどまだ視界が悪くて、早瀬先生の顔がぼやけて見えるし、耳鳴りのようなものがして声もよく聞こえない。
「熱いお湯に三十分以上も入っているからこうなるんだ」
早瀬先生が呆れたようにため息をこぼすので、居た堪れない気持ちになってくる。
「すみません。つい考え事をしていて……」
だから湯船に浸かりすぎて、のぼせてしまった。
早瀬先生の前でこんな失態をおかしてしまい恥ずかしい。
まだ少し水滴が残っている私の体を早瀬先生がバスタオルでさっと拭く。まじまじと体を見られて恥ずかしさが込み上げるが、一方の彼は顔色ひとつ変えずに落ち着いていた。
「怪我はしていないみたいだな」
どうやら体を拭きながら、転んだときにどこか打っていないかを確認していたらしい。無傷だとわかると浴衣を羽織らせてくれた。
「とりあえず移動するから、ちょっと我慢しろ」
早瀬先生は私の体を軽々と横抱きにして脱衣室を出ると、フローリングスペースにあるベッドに私を下ろす。