俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

斜め向かいに座った早瀬先生に〝お疲れ様です〟と挨拶をしようとしたけれど、彼の視線が隣に座る未華子先生に向かってしまい、私は静かに自分の言葉を飲み込んだ。

「そういえば成田、こうたくんの様子はどうだ」
「こうたくん?」

早瀬先生に尋ねられた未華子先生が不思議そうに首を傾げた。

こうたくんとは、心臓の病気で小児科病棟に入院している七歳の男の子だ。

生まれつき心臓に病気があったが小さい頃はほとんど症状がなかったらしい。けれど、成長して体を動かすことが増えたことで心臓の活動量も増え、そこで初めて症状が現れたそうだ。

その治療のための手術が先日行われて、無事に終了。術後は全身麻酔がかかったままICUに入室していたが、翌日には人口呼吸器から離脱でき、呼吸なども安定したためHCUに移った。

数日後にはさらに回復して、点滴や心電図モニターのみとなったため、小児科に転棟してきたのだ。

「早瀬くんは小児チームじゃないよね。それなのにどうしてこうたくんのことを気に掛けているの?」

生姜焼きを箸で掴み、食事を進めながら未華子先生がちらりと早瀬先生に視線を送る。
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