俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない




郡司総合病院の小児科病棟には0歳から十五歳までの子供が入院している。

四十ある病床はすべて埋まっていて、無事に退院を迎えた子もいればこれから入院してくる子もいるなど、地域医療支援病院として常に新規の患者を受け入れている。

退院する患者は午前中が多いため、付き添いのご両親に入院費の支払い関係や退院後の通院などの案内をするのもクラークである私の仕事だ。

隙間時間にカルテの整理や、新患受け入れの準備などをしていると時間はあっという間に過ぎていく。

午前の診療時間が終わり、お昼休憩を迎えた。

「あっ、島野さんちょっといい?」

ナースステーションを出ようとすると看護師さんに呼び止められる。振り向くと、なぜか彼女がハッとしたような表情を見せた。

「ごめん。また間違えて呼んじゃった。島野さんじゃなくて早瀬さんなのよね」
「呼びやすい方で大丈夫ですよ」

思わず苦笑してしまう。

私と早瀬先生が結婚して一週間が経ち、私の制服のネームプレートは新しく〝早瀬〟と書かれたものに変わった。

けれど看護師さんたちからは呼び慣れた島野で呼ばれることが多く、自分でもそう名乗ってしまうことがある。少しずつ新しい名字にも慣れていかないと。
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