俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「はい、妻です。普段は小児科病棟にいるので出会えてラッキーですよ、敏子さん」
冗談めかした早瀬先生の言葉に、敏子さんと呼ばれた女性が「ラッキーだわ、私」と笑っている。
随分と打ち解けている様子から、もしかしたら敏子さんは早瀬先生が担当している患者なのかもしれない。
「奥さん、お名前は?」
敏子さんの視線が私に向く。
「芙美です。小児科病棟で事務をしています」
ぺこりとお辞儀をすると「あらまぁ可愛い子ね」と敏子さんの声が聞こえた。
「私ね、あなたの旦那さんに病気を診てもらっているの。この前も手術をしてもらったばかりなのよ」
「そうなんですね。お元気そうでなによりです」
「ええ。随分と調子が良くなったわ」
手術をしたということは敏子さんも心臓の病気に犯されているのだろう。
「敏子さん。調子が良いからってまだあまり歩いたらいけないっていつも言ってるでしょ」
早瀬先生がぴしゃりと告げる。
「そろそろ看護師が検診に来る時間なので戻りますよ」
「でもせっかく先生の奥さんに会えたんだもの、もっと話したいわ。先生だって新婚なんだから奥さんとまだ離れたくないでしょ」
「俺は家に帰ればいつでも会えるからいいんです。ほら、病室に戻りますよ」