俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
名残惜しそうに私を見ている敏子さんの腰に早瀬先生がそっと手を添える。そのまま体を支えて、敏子さんを病室まで送っていく。
彼女のペースに合わせてゆっくりと歩く早瀬先生の後ろ姿を見つめながら、彼のことを好きになった日のことを思い出した――。
――今から一年前。
病院内を移動中に、年配の男性患者に心臓マッサージを行っている早瀬先生を見掛けた。
あたりには看護師や他の医師もいて、おそらく男性患者はその場で突然倒れてしまったのだろう。たまたま近くにいた早瀬先生が一番に駆けつけて心肺蘇生を行っていた。
男性患者は顔面蒼白で意識がなかった。
額に汗を滲ませながら懸命に心臓マッサージを続ける早瀬先生の姿に、これまでの彼の印象が私の中でがらりと変わった。
早瀬先生とは未華子先生を介して二年ほど前に知り合った。ちょうど彼がアメリカでの臨床留学を終えて戻ってきた頃のことだ。
第一印象はこわい人。彼の強気な態度と話し方が苦手だった。
優秀な外科医だと有名な早瀬先生は、出来の悪い私とは違って自分に自信があるのだろう。私とは真逆のタイプだ。