俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
きっと早瀬先生のようなタイプは、難しいオペのことしか興味がなく、病気だけを診ているような患者にとっては冷めたい医者なのだろう。
勝手にそんな印象を抱いていたのだが、患者の名前を呼び続けながら、額に滲む汗を拭うこともせず懸命に心臓マッサージを行う早瀬先生からは冷たさは一切感じられなかった。
必ず助ける。彼の姿からはその想いだけが伝わってきた。
しばらくして担当医が到着したようで早瀬先生から処置を引き継ぐと、患者を処置室へと運んでいった。
ずっとひとりで心臓マッサージを続けていたからだろうか。早瀬先生は浅い呼吸を繰り返しながら、運ばれていく患者をその場で見送っていた。
それ以来、病院内で早瀬先生の姿を探すようになった。
別の病棟にいるので見掛ける日は少なかったが、車イスを押しながら患者と談笑している姿や、退院する患者をエントランス付近まで見送りに出ている姿など、早瀬先生が患者に寄り添う姿を見ては私の中で日増しに彼の存在が大きくなっていき、気が付くと恋に落ちていた。
それ以来、私は早瀬先生に片想いを続けている――。