俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
この日は、定時よりも少しだけ遅れて病院を出た。
結婚を機に早瀬先生のマンションに越してきたのだが、病院まで徒歩十分の距離にあるので今日も歩いて帰宅する。
しばらくすると五階建ての低層高級マンションが見えてきた。エントランスを抜けてエレベーターホールに向かえば、ちょうど扉が開いたので乗り込む。
自宅は四階で、間取りは2LDK。ひとつ余っている部屋を私室として使わせてもらっているで早瀬先生とは寝室は別々だ。
帰宅後、広々としたキッチンで夕食の支度を始める。
お互いに勤務パターンが異なる私たちは食事や家事などの身の回りのことは基本的に自分たちでやると決めている。でも、自分の分を作るついでだからといって、早瀬先生の食事も一緒に作るようにしていた。
今のところ患者の容体が悪化して泊まり込みになった日以外、早瀬先生は私の作った夕食をすべて食べてくれている。
今夜は煮込みハンバーグだ。たまねぎをみじん切りにしているのだが、目が沁みて痛くなってきた。
それでも細かく刻み続けていると、玄関の開く音が聞こえる。早瀬先生が帰宅したようでリビングに姿を現した。
「おかえりなさい」
包丁を動かす手を止めて声を掛ければ「ただいま」と口にした早瀬先生が私を見て大きく目を見開く。慌てたように近付いてきて、目の前でぴたりと足を止めた。