俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
『――うちの病棟に来たとき看護師たちになにか言われたのか。それとも噂を聞いたか』
そういえばそんなことも口にしていた。
噂……。ふと思い出したのは職員食堂で耳にした看護師たちの会話。
「早瀬先生。私が心臓血管外科病棟の看護師さんたちから良く思われていないのをご存知なんですか?」
心臓血管外科病棟を訪れたとき、もしかしたら彼は私が看護師たちに直接なにかを言われたか、私の悪い噂をしているところに遭遇してしまったと勘違いをしたのかもしれない。それを気にして落ち込んで、泣いていると思い、慌てたように近付いてきたのだろう。
「お前こそ知ってたのか。看護師たちに噂されてるの」
「はい。職員食堂でお昼を食べるときに偶然聞いてしまって。私みたいな地味な事務員は、優秀な早瀬先生には不釣り合いだそうです」
苦笑しながら伝えれば、私を見る早瀬先生の目が険しくなる。
「お前そんなこと言われてなにヘラヘラ笑ってんだよ」
「えっ、ヘラヘラ?」
「笑ってんだろ。そんなこと気にならないみたいに」
ヘラヘラ笑っていたわけではないのだけれど、早瀬先生にはそう見えたらしい。それに、気にしていないわけでもない。